アートマガジン『InfoMart』

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インタビュー

村治佳織(ギター)【2020年9月19日 公演】

イタリア最高峰のアンサンブルと紡ぐ『四季』
日本が世界に誇るギタリスト村治佳織が久々に所沢ミューズに登場。ヨーロッパ屈指の名門合奏団と、ヴィヴァルディ『四季』のギター版に挑む。聴き手を魅了してやまない名ギタリストの“いま”について話を聞いた。

新イタリア合奏団 村治佳織[ギター]

村治佳織(ギター)イメージ

いつもそばにあったギター弟・奏一の存在 父がギター教師なので生活のなかにギターも当たり前のように存在し、言葉を覚えていくのと同じようにギターの音も常に聴いて育ちました。お箸をいつの間にか使えるように、気がついたときにはギターを弾いていました。4歳のときに弟の奏一が誕生しましたが、育った環境は私とまったく一緒。ギタリストとして気持ちを分かち合える弟の存在はいまも大変心強いです。小さい頃は練習場所の取り合いで小競り合いはあったようにも記憶していますが…(笑)。コンクールに参加するときは、私が中学生部門であれば弟は小学生部門というように4歳差が功を奏し、別部門でエントリーできたのがよかったと思います。姉弟で同部門だったら、火花が飛んでいたかもしれませんね(笑)。いまでもお互いの良き理解者で共演も多いです。いつか弟と一緒に所沢ミューズで演奏できたらと思っています。

友人、恩師、パリ留学時代 父にギターを習った後、10歳から約8年間は福田進一先生に教えていただきました。パリのエコール・ノルマル音楽院では、アルベルト・ポンセ先生に師事しました。パリでは大萩康司さんと同門となり、音楽を学ぶ同年代の友達が初めてたくさんできました。日本では音楽とは関係のない中学・高校に通いましたので、将来就きたい職業はみんなバラバラ。音楽を志す友人たちとできる話、それぞれの違う目標を持つ友人たちとできる話はまったく違い、視野を広く保つことができ、友人たちは私にとっては宝です。

スペインでの体験―人生の宝物 20代前半でスペインを訪れ、その魅力を肌で感じることができたことも人生の宝物です。最近、出版された濱田滋郎先生の『約束の地、アンダルシア』(アルテスパブリッシング)は本当にお薦めさせていただきたい名著です。私が長く滞在したのはマドリッドですが、スペインと一口にいっても、東西南北・中央と場所によって文化も異なります。「スペインの魅力!」は一言では表現できませんが、目が覚めるほどの濃いブルーの空、強い日差し、そしてアクセントの効いたスペイン語、人々の開放的な雰囲気でしょうか。私も影響を受け、笑顔のときの口の開け方が大きくなったり、ギターの音も明るくなったと何人もの方に言われました。私は東京の下町育ち。人と人の距離が近いところがマドリッドで出会う人々の気質にも通じるところがあり、とても居心地が良かったです。

「頑張らないことを頑張る」という哲学 1993年のデビューから、留学、海外レーベルへの移籍など環境は変化しましたが、「ギターの素晴らしさを聴いてくださる方のお心にお届けする」これが私の純粋な願いです。若い頃は頑張る気持ちが強く、肩に力が入ることも多々ありましたが、ギターは繊細な楽器ですから、力が入ってしまっては繊細さがうまく表現できません。いまは、肩肘はらずに「頑張らないことを頑張る」ことも人生経験を重ねるにつれできるようになった気がしています。ステージに立てることへの感謝。ギターを弾けることへの感謝。聴きにいらしたお客様への感謝。感謝の気持ちで緊張をも包み、「頑張る」というより、あたたかい気持ちでステージに立つことができているのを実感するときに、以前の自分との変化がわかります。

新イタリア合奏団との共演 10代後半にヨーロッパ・デビューで演奏したのがトリノでした。良い思い出もたくさんあり、イタリアも好きな国の1つです。まさかヴィヴァルディの『四季』を全曲弾くことになるとは想像していませんでしたが、新イタリア合奏団との共演が実現しとても楽しみです。今回はイタリアのリュート奏者カンタルピさんが原曲に忠実にアレンジしてくださって、演奏不可能に思われるところもなく(笑)、いま楽しんで練習を重ねています。全世界が混乱の渦に飲み込まれているいまだからこそ、四季の美しさを表すこの曲に格別な想いで向き合えるのではないかと思います。これまで所沢ミューズでは、大中小すべてのホールで演奏しましたが、例えばバッハをじっくりお聴きいただくリサイタル、ギターとほかの楽器のコラボ、もしかしたらエレキギターで1曲弾いてみたり?!アイデアは湧いてきます。まずは9月、久しぶりにアークホールで演奏するのをとても楽しみにしています。

【2020年9月19日 公演】

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