アートマガジン『InfoMart』

インタビュー

千住真理子【2021年3月20日 公演】

2020年にデビュー45周年を迎えたヴァイオリニスト、千住真理子。名器デュランティと運命の出逢いを果たした名手の幼少期、デビューを飾ったそのいきさつ、コロナ禍のいま音楽と向き合い思うことなど、多岐にわたって語っていただいた。

千住真理子[ヴァイオリン]

千住真理子イメージ

母との思い出 ヴァイオリンとの出逢い 我が家はとても賑やかな家庭でした。母はYMCA で長年リーダーをやっていた人ですから、子どもたちと遊ぶのが本来得意だったのでしょう。毎日が楽しく、毎日が冒険、お庭でおにぎりを食べるだけでもまるでピクニックに出かけたかのようでした。そんな母でしたので、母がいてくれれば当然ヴァイオリンを練習する時間も楽しくて仕方がなく、良い思い出ばかりです。母の即興の作り話やミュージカルもどきに、お腹を抱えて笑いながらヴァイオリンをさらいました。長男で日本画家の博、次男で作曲家の明、2人の兄がヴァイオリンをすでに習っていました。2人に対して羨ましい気持ちを持ったのを覚えています。ですから一般より早く、2歳3カ月の、まだ赤ちゃんのうちに小さな赤ちゃん用ヴァイオリンを弾き始めました。2人の兄とはいまでも励まし合う良い関係です。

12歳でデビュー! 世界で活躍 デビューのきっかけは、1973年に日本学生全国ヴァイオリンコンクールで全国優勝したことです。それがチャンスとなって、NHK 交響楽団との共演によるデビューが決まったのです。1985年には指揮者のジュゼッペ・シノーポリに認められ、1987年にフィルハーモニア管弦楽団定期演奏会でロンドンデビューも果たしました。これは偶然のチャンスでした。イギリスのホールでリハーサルをしていたのを、マエストロ・シノーポリがたまたま聴いて、それがオーディションとなり、その場でデビューが決まったのです。1999年にはニューヨーク・カーネギーホールでソロ・リサイタルを開きました。無伴奏リサイタルによるデビューはイザイという難曲を抱えて心細いものでしたが、聴衆の温かい雰囲気で、清々しいコンサートを終えて成功を収めることができました。

幻の名器「デュランティ」 2002年、幻の名器ストラディヴァリウス「デュランティ」との運命的な出逢いを果たしました。これは私がヴァイオリニストとして生きてきて、このうえない素晴らしい出逢いでした。このデュランティの最初の所有者はローマ法王“クレメント14世”であり、法王の没後約200年間フランスのデュランティ家の家宝として納められ、その後約80年間スイスの公爵のもとにあったそうです。しかし私はこの楽器の由来に惚れたのではなく、音に惚れてしまいました。人生観も変わりました。約18年「デュランティ」を愛用して、いまやデュランティなしの人生は考えられませんし、デュランティほどの素晴らしいストラディヴァリウスを与えられたからには、もう何も望むものはありません。もはやデュランティは単なる楽器ではなく、生き物だとしか思えません。

心に響く音楽を求めて アウトリーチでの演奏活動も精力的に行っています。福島県富岡漁港での復興支援リサイタルや、小学校・中学校、老人ホームでの演奏会などなど…。そこには生まれて初めてクラシックやヴァイオリンを聴く方々が大勢いらっしゃいます。言葉では言い表せないくらいの幅広い音楽の素晴らしさを感じてほしいと願っています。2020年に入り、コロナウイルスの影響で自粛生活となった半年は、すべてのコンサートが中止や延期になり、ただ一人黙々と練習するばかりの日々でした。自分自身と絶えず向き合い、生きる意味、死ぬこと、音楽とは何か…音楽の価値を問い続けた日々です。そんな日々を過ごしたからこそ、今後も1人でも多くの方に音楽の素晴らしさを届けたいと思っています。

共に音楽を体感する幸せ 今回のコンサートは、親しみやすい作品から技巧的な作品まで名曲を用意しています。クラシック音楽の素晴らしさを味わっていただきたく、トークを混ぜながらのステージにしたいと思っています。楽しく聴いていただけたら嬉しいです。デビューから45年を向かえたいま、「いまここに共にいる実感」「共に音楽を体感する幸せ」「生きる喜び」を届けたい! という想いが溢れています。所沢ミューズでのコンサートは2017年のコンサート以来4年ぶりですが、アークホールは素晴らしい響きのホール! 弾くのが待ち遠しいです!

【2021年3月20日 公演】

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