季刊誌『InfoMart』

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インタビュー

小山実稚恵(ピアノ)【2018年1月6日 公演】

新春を彩るMUSEニューイヤー・コンサートに小山実稚恵が初登場! チャイコフスキー、ショパンの二大国際コンクールに入賞という快挙を成し遂げ、以来30年にわたりピアノ界を牽引し続ける稀代の名ピアニストにお話を伺った。

小山実稚恵(ピアノ)

子どもの頃~ピアノとの出会い 仙台で生まれ、盛岡で育ちました。豊かな自然に囲まれた環境でしたので、外で遊ぶことが好きでした。両親が買ってくれた2オクターブくらいの小さなおもちゃのピアノも好きで、いつも遊んでいた記憶があります。その後、本物のピアノがほしいとねだり、6歳の誕生祝いにアップライトピアノを買ってもらいました。
母がいくつか子どもの発表会を見に行き、一番子どもたちが楽しそうで生き生きしている音楽教室に決めたそうです。練習はあまり好きではなかったですが、ピアノは大好き。一度もピアノを嫌いになったことはありません。コンクールを受けに行くときも「東京に行ける!」という思いでわくわくしたことを覚えています。

中学時代~東京へ転校 中学の頃は先生の喜ぶ顔が見たくてピアノを弾いていたかもしれません(笑)。中2のときに父が東京に転勤になり、中3で東京の中学に転校しました。それまでは家と学校とピアノ教室に、豊かな自然が一体になった生活でしたが、東京藝大付属高校に入学して電車通学になり、何もかも刺激的でスピーディーな生活に変わりました。音楽高校なので弦楽器や管楽器などのピアノ以外の友人も増えて、とても楽しい学生生活を謳歌しました。高校から大学院まで田村宏先生に教えていただきました。田村先生は厳しくて有名でいらっしゃいましたが、本当に生徒思いで心の優しい方でした。

チャイコフスキー・コンクール3位&ショパン・コンクール4位入賞の快挙! チャイコフスキー・コンクールに出場したときに、使用するピアノを2台のなかから選ぶことができたのですが、そのときの楽器の音色を忘れることができません。それまで弾いたことのないような美しい音色にゾクッとしました。選びがたいほどでした。ピアノの音色というものに対する思いが変わった瞬間です。ソ連時代のロシアでしたので、その独特な空気も印象に残っています。
ショパン・コンクールは、いまもそうですがショパンの作品だけを演奏します。でもブーニンやルイサダ、ヤブロンスキーなど、受賞者は全員とても個性的だったと思います。「良き時代」のコンクールだったのでしょうね。

子どもたちへの思い 素晴らしい未来、明るく力強い未来は、子どもたちのパワーがつくってくれるのだと私は信じています。2011年の東日本大震災後は、被災地の学校などで演奏することが多くなりましたが、震災の前もたくさんの小中学校で演奏してきました。生のピアノを学生さんに間近で聴いてもらうことで、何かを直接感じてもらいたいと思ったのです。体育館や音楽室でのワークショップですが、子どもたちは興味津々、とても喜んでくれます。2007年、所沢の小中学校でのワークショップのことも、とても懐かしく思い出します。
3年前から故郷の仙台で「こどもの夢ひろば“ボレロ”」というイベントを始めました。今年が3回目ですが、震災があったからこそ力強く生きてほしい。心から好きだといえるものと出会ってほしい、という思いでつくった楽しい広場です。本当に好きなものに出会える広場になったら嬉しいなと思っています。

愛猫ちゃんたちとピアノ 最初に家に来たルビンは、敬愛するピアニスト、ルービンシュタインから名前をいただきました。とても音楽のわかる猫で、ショパンの曲などが終わると「にゃん」と鳴いたりしていました(笑)。マルコは、来た日に家中を冒険していたのでマルコ・ポーロのよう、と思って名づけました。いま家にいるララはクララ・ハスキルとクララ・シューマンにちなんでつけたので、マルコだけが音楽には関係のない名前です。そのためかあまり音楽に興味がなかったのですが、ある日、ほかの家に預けられているとき、あまりにも鳴くので私のCDをかけたらおとなしくなったと聞きました。3匹目のララは初めての女の子。ちょっと変わった味覚の持ち主で、日本茶や水羊羹に興味津々。ほかの猫は驚いてしまいそうなベートーヴェンのソナタ31番が好きで、弾いていると機嫌良さそうに寄ってきます(笑)。

MUSEニューイヤー・コンサートラフマニノフへの想い ラフマニノフは、チャイコフスキー・コンクールの本選で弾いた曲で、東京藝大の卒業演奏もラフマニノフで、大学院の卒論もラフマニノフでした。ですので、音楽人生を共に歩んできたように感じています。ピアノ協奏曲第2番は大変な名作で、演奏していると目の前にロシアの情景が広がります。ラフマニノフの作品は、華麗であったり、ピアニスティックであったりと、作品としての豪華さもあるのですが、一番感じるのはロシアの冷たい空気や広大な大地です。私が生まれ育った東北の原風景とも重なり、心惹かれます。

【2018年1月6日 公演】

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