季刊誌『InfoMart』

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インタビュー

綾戸智恵(ジャズピアニスト・シンガー)【2015年1月18日 公演】

ジャズという枠組みを飛び越え、パワフルな演奏とトークで聴衆を魅了する綾戸智恵さん。
50歳を過ぎてなお圧倒的なエネルギーを放ち輝き続ける名ピアニストが、
2015年1月18日に所沢ミューズ・マーキーホールに登場します。
10月2日、ライブ直前の控え室で、幼少期から今日に至るまでの様々なお話を伺いました。

綾戸智恵(ジャズピアニスト・シンガー)

幼少時代 いまと全然変わらへん、動きの速い子やったわ。遊びに行くのもお茶碗洗うのもちゃっちゃとやってたよ。それで、口より先にもう行動してたかなぁ。
いつからピアノを弾いたんか覚えてへんけど、たぶん2~3歳かな?何の曲かもわからずに鍵盤叩いとったと思うわ。カトリックの幼稚園に親が入れてくれて、そこでドイツ人の先生にピアノを教えてもらってん。技術的なことより、感情とか。そう、ムードっちゅうかそういうことを教わったと記憶します。
いっぱい曲を弾かせてもらったわ。当時の曲は忘れたけど、楽譜にドイツ語が書いてあったからたぶんクラシックの曲やと思うよ。

小学校の思い出 「将来の夢」という作文を書いたら、内容がひどいって母が学校に呼び出されてね。私は、

1.毎晩スルメを食べる
2.アメリカへ行きたい
3.スイカをたくさん食べたい
4.○○君とデートがしたい
5.フランク・シナトラとデュエットがしたい

って60個くらいの夢を全部書いてん。先生は「お宅の子だけまとまりがなく、将来の方向性が決まってない」って言うて。でも母は、「まだ小さいのに夢を一つに決めなあきまへんか?したいことがたくさんあるっていうことになりまへんか?」って私をかばってくれてね。いまでもそうやけど、勉強したり考えたりするのは好きやなくて、感じたままとっさに出てくるものが好きやったんやと思うわ。

真木利一(まきりいち)先生と小さな手 ピアニストにしては手が小さいけど、子どもの頃はもっと小さかってん。5歳のときモーツァルトのトルコ行進曲を発表会で弾いてんけど、指が届かへんねん。それで楽譜どおりに弾くクラシックやなくて、自分の好きなように弾けるオリジナルの曲がええなと思ったわけやね。
中学生ぐらいの頃に習った真木利一先生は、「この子は耳がええねん。音を聴いたら色も見えるし風景も見えるし、何でもわかんねん。せやから楽譜なんか間違えてもしゃあないねん」っていつも誉めて励ましてくれたわ。練習曲みたいのはさせんと、スペインの曲とかバッハの曲とか、面白い曲をたくさんさせてくれて。この曲面白くないって言うたら違うの持ってきてくれたし。最終的に一番ちゃんと習った人で、一番影響を受けた人ですわ。

17歳でアメリカへ ジャズの勉強しに私がアメリカに行ったってみんな思ってるみたいやけど、ほんまはちゃうねん。アメリカが好きやっただけ。西洋かぶれというか、アメリカ好きやね。音楽家になろうとはこれっぽっちも思ってへんかったわ。
映画が大好きでぎょうさんアメリカの映画観てて、どんな男前とべっぴんさんがおるんかと思ったら、やっぱりアメリカにもブサイクな人がおるんやなって安心したわ(笑)。

古着市での演奏 日本人の観光客を相手にしてバイト代を稼いだりしてたんやけど、古着市に案内したとき、そこに映画で見たような古いピアノが置いてあってね。店のおっちゃんが「このピアノを観光客に売ったら600ドルからリベートあげる」って言うから、売れたらええなと思ってその場で弾いてん。そしたら人がどんどん集まってきて、結局投げ銭で100ドルくらい稼いだわ。ピアノは売れへんかったけどね(笑)。やっぱ人を集めて楽しませるには音楽がええなとそのとき思ったわ。

マッコイ・タイナーとの奇跡の共演 ある日、店にライブを聴きに行ったら、ピアノの人がステージに私を呼んでくれて一緒に弾いたことがあってん。どこで入ったらええのかわからへんかったけど、周りがうまいこと合わせてくれて。「君のピアノはいい」って誉められて、写真も撮ってもらってね。後でその写真を人に見せたら「これ、マッコイ・タイナーっていう有名なジャズ・ピアニストだ」って言われてびっくりしたわ。そのくらいジャズなんて知らんかったからね。

帰国 ~ ジャズ・ピアニストとして大ブレイク 1991年に帰国したんやけど、私の音楽が受け入れられるんやって気づいたのは40歳でデビューしてからよ。音楽のこともよくわかってへんかったし、追求もしてへんかったから。デビューしてお給料もらって、初めて自分で音楽をやろう、音楽をやるんやと思ったね。
いろんなホールやライブハウスで演奏してきて最近気づいたのは、やっぱり器(ホール)も大事やってこと。昔はどんなコップに入れてもビールはビールやと思ってたんやけど、実は違うねえ。ええグラスで飲むと断然おいしいもんね。それと一緒で、同じ曲でもこのホールではお客さんに受けるけど、別のホールやと全然受けへんし演奏も縮こまってしまうってことがあるんやね。その場をよまなあかんということかなあ。

将来的にしたいこと 自分で探すんやなくて、自分のところへ来たものがしたいことかなあ。声優なんか無理やと思ってたけど、絵本を読んでほしいというお仕事が来てさせてもらったし。自分のところへ来るまで待ってたらええんやと思うわ。自分よりもほかの人のほうが私のことをよく知ってるからね。いただいたお仕事を楽しんでいきたいですわ。
所沢のマーキーホールは初めてやけど、すごい雰囲気の良さそうなところやし、このホールが呼ぶような曲とかお客さんが求めるような曲をやりたいですねえ。皆さんのお越しをホールで待ってますよ!

【2015年1月18日 公演】

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