季刊誌『InfoMart』

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インタビュー

宮田大(チェロ)【2014年7月20日 公演】

2009年、日本人初となるロストロポーヴィチ・コンクール優勝から5年。
クレーメル、小澤征爾、ヴェンゲーロフなどと共演し、
国際派チェリストとして存在感を増す輝く才能の素顔に迫る!

宮田大(チェロ)

第二の母、倉田澄子先生 3歳からチェロを始めました。元気な子で少し落ち着きがなかったみたいで、それで集中力をつけさせようと、座って弾くチェロを両親が習わせたようです。3歳から中学1年生までは父にチェロを学び、それから倉田澄子先生につきました。倉田先生は「第二の母」といえるような大切な存在で、チェロだけでなく人間的にもいろいろなことを教えてもらいました。とても心の広い方で、中学のときバレーボールで突き指をしてしまっても、全然怒ることもなく見守ってくださいました。高校で音楽科に進学する頃、演奏家としての意識が芽生え始めましたが、倉田先生の温かい指導あってのことだと思います。

留学時代。スイスからドイツへ ジュネーヴ音楽院では、タカーチ弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンのカヴォール・タカーチ=ナジ先生に師事しました。タカーチ先生からは、無理して何かを作ったり、飾り立てるのではなく、自分のなかにある経験を見つめ直しそれを出せばいいと言われ、気持ちが楽になりました。日本酒を飲まされてほろ酔いでレッスンしたこともあります。とにかく音楽する楽しさを教えていただきました。

ドイツのクロンベルク・アカデミーでは、チェロのヘルメルソン先生に師事しました。その頃は海外で演奏する機会も増えて、どのように自分の個性を出したらよいのか模索していましたが、先生からは「音楽を作る(Make Music)」ではなく「音楽を感じる(Feel Music)」ということを言われました。音楽をよく感じて、失敗を恐れずに感じた通りに弾く。もし失敗したとしても、それはいまの自分の個性のひとつだ、と言われ表現の幅が広がった気がします。このアカデミーでは、チェロの先生だけでなくヴァイオリンのクレーメルやピアノのシフなど超一流の講師のレッスンがあり、本当にいろいろなことを学びました。シフ先生とレッスンしたブラームスのチェロ・ソナタはとても記憶に残っています。

2009年、ロストロポーヴィチ・コンクール優勝 ロストロポーヴィチさんとは残念ながらお会いしたことがないのですが、演奏を聴いたり映像を見ると地球の引力に逆らわない弾き方が見事です。体の内側から出るパワーがとにかく凄い! その彼が創設したコンクールで日本人として初めて優勝することができましたが、人と競うというより1曲ごとに演奏会の感覚で弾いていました。

優勝が決まったガラ・コンサートでは、嬉しさや安堵感もありましたが、いつもはホールの隅っこで聴いている父と母が前から3列目の真ん中の席に座らされていて、ドヴォルザークの協奏曲を演奏しているときに感謝の気持ちとかいろいろなものがこみ上げてきて涙が出ました。

小澤征爾さんとの共演 小澤征爾さんの指揮で水戸室内管弦楽団と共演したハイドンも、とても記憶に残っています。初日の水戸の公演では、小澤さんと対話をしながら頑張って自分の演奏を探っていく感じでしたが、東京の公演では天皇・皇后両陛下もご臨席くださり、小澤さんと同じ音楽の流れのなかでリラックスして演奏できました。小澤さんからは、きれいな音だけではだめ!崖から一歩踏み出すくらい弾いていい、と言われました。ロマンティック過ぎるくらいに弾いても小澤さんが様式の枠組みをしっかりつくってくださるので安心して弾けました。

メンデルスゾーン、バルトーク、そしてファジル・サイ 所沢ミューズで演奏するメンデルスゾーンのチェロ・ソナタ第2番は29歳の頃に作曲された曲ですが、その年齢と近い今の自分が表現するとどのようになるのか楽しみです。この曲はロストロポーヴィチ・コンクールの二次審査で弾き、深く勉強して体に沁み込んでいる作品です。コンクールの審査員ムニエさんから、「君の優勝はメンデルスゾーンの第3楽章で決まったんだ」と後日聞かされた想い出の多い曲でもあります。

ハンガリーのバルトーク、トルコのピアニスト、ファジル・サイの作品は、共に民族的な要素が豊かにあって大好きな曲です。音楽を聴くといろいろなイマジネーションが湧いてくるし、アジア的な要素もあって思い切った表現にチャレンジしやすい曲ですね。ひと味違った宮田大を聴いていただけると思います。所沢で皆さんと音楽を一緒に感じられるのを心待ちにしています。また、所沢ミューズの素晴らしい響きのなかで演奏することをいまから楽しみにしています。

【2014年7月20日 公演】

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