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インタビュー

宮田 大(チェロ)【2020年12月12日 公演】

ロストロポーヴィチ国際チェロコンクール優勝から11年。国際派チェリストとして活躍し続ける若き逸材の素顔とは?満を持して挑むロシア・プログラムの魅力も語ってもらった。

宮田大 チェロ・リサイタル

宮田大(チェロ)イメージ

子ども時代〜ヴァイオリンからチェロへ 母がヴァイオリン教師で、2歳からヴァイオリンを始めました。落ち着きがなく「座って練習しなさい」と怒られたりして、父が教えるチェロに変わりました。「1回ちゃんと弾けたら飴をあげる」という感じで、チンパンジーの餌づけのようだったと思います(笑)。机の上に椅子を置いて「今日は宮田大リサイタルだね」とか、庭に出て「青空の下で演奏会だね」なんて言って気分転換させながらレッスンしてくれ、両親からは音楽の楽しさを教えてもらいました。

小澤征爾さんとの想い出 高校生のとき、桐朋学園創立50周年記念コンサートで小澤征爾さんと初めて共演させていただきました。サントリーホールで、OB・OG のオーケストラとハイドンのチェロ協奏曲を演奏し、小澤さんが溌剌と指揮してくださった想い出があります。大舞台でトップクラスの演奏に触れ、「自分もこんなふうになりたい」とプロを目指すようになりました。

尊敬する恩師の教え 倉田澄子先生には、自分の音楽性の大部分を占めるものを教えていただきました。弓の持ち方、脱力、引力に逆らわない奏法など。「息の長い演奏家に」といつも言ってくださり、怪我をしないよう、気持ちが乗る演奏方法を教えてくれました。いまでも連絡を取りますが、声を聞くだけで初心に戻れるような先生です。
留学時代のヘルメルソン先生は、最初のページを弾くと「次は違う感情で」「内に込めた気持ちで」「誰も見ていないから自由に!」などと言われるんです。弾き終わると「全然違う演奏ができたでしょ? 音楽を作る〈make〉のではなく感じて〈feel〉演奏しなくてはいけないよ!」と言われました。そのときに感じたことを大切にするという、とても重要なことを教えてもらいました。

コンクール優勝から11年~現在の心境 ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで優勝した翌日に、ドヴォルザークのチェロ協奏曲をパリ管と演奏しました。演奏後、涙を流す母の姿がちらっと客席に見えて、もらい泣きしそうになりました。その時のことを思い出すと、いまでも感極まる気持ちになります。その後は恩返しというか、人のために感謝しながら演奏することが増えて、より音楽に集中できるようになりました。最近は、どんなプログラムでも「宮田大だから聴きに行きたい」と言われる方が増えてきましたし、「演奏を聴いて気持ちが和らいだ」なんて言っていただけるようになり、変化を感じます。

愛器ストラディヴァリウス「シャモニー」 私の楽器は、上野製薬より貸与を受けた1698 年製ストラディヴァリウスCholmondeley(シャモニー)です。以前はアマデウス・カルテットのチェリストが弾いていたそうですが、一番心掛けているのは歌うことです。音楽には言葉がないので、音で歌いどう感情を伝えるか、常に挑戦しています。この名器を通すと、より一層奥底にある感情が伝えられるような気がします。

今回のロシア・プログラム 念願叶ってのプログラムです! 昔からロシアの曲が大好きで、小学6年のときストラヴィンスキーの「春の祭典」「火の鳥」など父が持っていた楽譜を借りて遊んでいました。ラフマニノフのソナタは涙が出るくらい好きな曲です。厳しいソ連の時代に書かれていますが、チェロ・パートは幸福度MAX に朗々としていて、現代とは違った幸せが描かれているように感じます。ピアノ・パートはまるでコンチェルトのような聴きどころがあるので、ジュリアンのピアノも楽しんでいただけると思います。ロシアのジャズピアニストであるカプースチンも大好きな作曲家です。縦ノリ・横ノリ、スイングして気持ちのいい曲なので、身構えずに聴きにいらしてくださいね。ロシア・プログラム=いまの宮田大の魅力が聴ける! と思っていただけたら嬉しいです。

【2020年12月12日 公演】

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