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インタビュー

小山実稚恵(ピアニスト)【2020年4月11日 公演】

16カ月の休館を経ていよいよ2020年4月にリニューアル・オープンを迎える所沢ミューズ。4月11日にはオープン間もないアークホールに、名実共に日本を代表するピアニスト小山実稚恵が登場します! 名ピアニストが抱く大作曲家ショパンとチャイコフスキーへの想いをうかがいました。

小山実稚恵 華麗なるコンチェルトの世界

小山実稚恵(ピアニスト)イメージ

初挑戦のチャイコフスキー・コンクール、そしてショパン・コンクール 1982年に初めて海外の国際コンクールに出場したのが、チャイコフスキー・コンクールでした。まさか入賞できるとは夢にも思っていなかったので、音楽の幅を広げるつもりで無欲で挑戦できたのだと思います。コンクールに携わっているスタッフの方達の音楽愛の強さ、そして聴衆の耳の鋭さに驚き、感銘を受けることばかりでした。私が海外のコンクールを初めて受けたということもあり、誰にも何も知られていない新鮮な存在だったのが良かったのでしょうか、または、将来性を慮ってくださったのでしょうか・・・・3位は思いもかけない結果でした。そのチャイコフスキー・コンクールに入賞してから3年後、ショパン・コンクールに出場することにしました。本選ではワルシャワのオーケストラとショパンのコンチェルトが演奏できるということなので、実現したら嬉しいな、という単純な思いで参加を決めました。優勝はブーニン、2位ラフォレ、3位ヤブウォンスキ、5位ルイサダと、とにかく出場者が個性豊かで、「良き時代」のコンクールでした。本選で共演したワルシャワ国立フィルの響きには、カルチャーショックを受けました。私の想像していたオーケストラの響きとは全く違う音、地に足がついた力強さがあり、ポーランド人の誇りを感じる響きだったんです。

ショパン〜孤高の作曲家 初めてショパンを演奏したのは小学校5・6年の頃、ノクターンの5番だったと思います。ショパンのピアノ作品は、優美で繊細でロマンティック。とにかく美しいのですが、それだけでは語れません。癒しの音楽と言われることがありますが、私はショパンに全く違うものを感じます。美しすぎて、痛みすら感じる音楽、それがショパンの印象です。だからでしょうか、子供はショパンの音を弾くことはできても、ショパンの心を弾くことはできないと思うのです。人間としての青年・壮年期のほとばしる感情がショパンの中で濾過されて凝縮されている。美しさの芯にやどる静かな強さが、特別なのです。そしてそれが、本当に美しいのです。

チャイコフスキー〜ロシア音楽の原点 ショパンを小学生で演奏したのとは対照的に、チャイコフスキーの音楽に初めて取り組んだのは、チャイコフスキー・コンクールに出場が決まってからでした。ピアノ協奏曲も初めて譜読みをして、コンクールの本選で初めてオーケストラと合わせたくらいですから。
チャイコフスキーの音楽はダイレクトに人の心に訴えかけ、心を掴んでゆきます。ロシアには素晴らしい作曲家がたくさんいますが、その中でチャイコフスキーの存在は特別です。ロシア人の方と話していると、チャイコフスキーはロシア人の魂、心の拠りどころなのだなぁと感じます。

深まる音楽への思い ピアノを習い始めたのが6歳の少し前ですので、もう55年間ピアノを弾いていることになります。音楽活動を始めてからでも35年経ちます。これまで国内外の多くの演奏会に出演させていただき、活動のスタートとなった2つの国際コンクールで審査員を務める機会もありました。そして、震災のように思いもよらない悲しい出来事、演奏会を通じてこの上ない幸せを感じる瞬間も数えきれないほど経験しました。しかし、時が流れても、常に傍にあるピアノへの想いは変わりません。それどころか「ピアノ愛」は日々深まり、ますますピアノが好きでたまらなくなっています。
美しさの中に毅然とした強さを持つショパンの音楽。ロシアの大地を想わせる壮大さと繊細でナイーブな感性が見事に共存するチャイコフスキー。このたびの所沢ミューズで、この素晴らしい2曲のコンチェルトを演奏できることをとても幸せに思います。秋山先生指揮の東響さんと一体となって、ショパンとチャイコフスキーの音楽を築いていけたらと思っております。

【2020年4月11日 公演】

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