季刊誌『InfoMart』

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インタビュー

加藤健一(俳優)【2016年6月25日 公演】

昨年公開された映画「母と暮せば」で第70回毎日映画コンクール男優助演賞を受賞された加藤健一さん。初演で大好評を博した「Be My Baby ~いとしのベイビー~」の全国ツアーも決定し、ミューズには最終日に登場します!
作品のことはもちろん、少年時代から現在までを振り返る貴重なお話を伺いました。

加藤健一(俳優)

少年時代~俳優を志すまで 火薬銃を作ったり、チャンバラごっこをしたり、勉強もせず遊んでばかりの子どもでした。当時私の住む村にも映画館があってよく観に行きましたが、役者に対して漠然とした憧れを抱いたのは石原裕次郎さんが出てきた頃です。まさか自分が役者になるとは思ってもみませんでしたが。
高校卒業後は建設会社に勤めました。見習い期間中は現場勤務でプレハブに寝泊りし、共同作業をするのが楽しかったのですが、見習い期間が終わるとオフィス勤務となり、馴染めずに半年で会社を辞めました。
その後、何らかのもの作りに携わりたいと考え、いろいろな専門学校などの案内書類を取り寄せました。そのなかに劇団俳優小劇場の養成所があり、特別な考えもなく費用が安かったのでそこを選びました。もし他の学校が安かったら、今頃は俳優ではなかったかもしれませんね(笑)。

養成所時代~現在へ 養成所の座長だった早野寿郎先生の言葉はいまでもよく覚えています。「芸術家とは、芸術の女神の衣の裾に一瞬でもいいから触れようとして、ずっとジャンプをし続けるものだ」と。目指すべきものはお金や名誉ではないという大切なことを教わりました。いまでも心に染み込んでいます。
劇団が2年で解散してしまい、21歳の頃からは自分で芝居を作るようになりました。上演作品は自分で本を読んで決めますが、それは当時から変わりません。
30歳で加藤健一事務所を設立しました。自分がやりたい芝居や役柄をできることはやはり一番の喜びです。芝居を作り、演じることに苦労を感じたことはないですね。常に遊び心を働かせていないとうまくいかない仕事ですが、私の場合は楽しめているのだと思います。それが長く続けてこられた秘訣かもしれません。

映画「母と暮せば」出演、初の映画賞受賞 山田洋次監督から直接、出演依頼がありました。撮影と舞台が同時進行だったため、地方公演先で演じ、翌日は撮影現場に戻るというような日々でした。映画は27年ぶりの出演で、吉永小百合さん、二宮和也さんという国民的スターとの共演でしたが、演技に関してはいつもどおりの姿勢で臨めました。ただ、舞台では声を響かせる癖がついているので、撮影現場に戻るたびに「もう少し声を抑えて」と監督から言われました。発声の仕方が違うんですね(笑)。
この映画で第70回毎日映画コンクール男優助演賞をいただき、大変ありがたく思っています。舞台で多くの賞をいただいたのもありがたいことですが、その瞬間から忘れよう、天狗にならないようにと努めています。

「Be My Baby」再演に向け 面白い芝居というのは多々ありますが、今回は「ものすごく面白い」芝居にしたいと思っています。とにかく笑っていただきたいですね。出身地も違い、対立する人間同士が無欲の赤ん坊を間に置くことで歩み寄っていくというストーリーですが、現実の世界の国々が仲良くなるためのヒントが込められているようにも思います。
3年ぶりの再演ですが、出演者は全員初演時のバイタリティー溢れるメンバーです。息子(加藤義宗さん)のことはまだ客観的に見られず、うまく演じてほしいなど、父親の私としてはよけいなことが頭をよぎります(笑)。
前回よりも完成度の高いものを作り出せるか、自分でも楽しみにしています。どうぞご期待ください。

【2016年6月25日 公演】

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