季刊誌『InfoMart』

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インタビュー

白石加代子(舞台女優)【2014年8月23日 公演】

1992年6月に岩波ホールで始まり、22年の年月を経て
ついに第九十九話ファイナル公演を迎える『白石加代子「百物語」シリーズ』。
シリーズ誕生のいきさつや作品選びの裏話をご本人に語っていただきました。

白石加代子(舞台女優)

22年前 -「百物語」誕生秘話 思い出すのは当時岩波ホールの総支配人だった高野悦子さんに「百物語」の企画を最初にお持ちしたときのことです。「舞台の上は裸電球一つ。白石加代子が怖い話を九十九話朗読する」という百物語のイメージを聞いていた高野さんは、「岩波ホールは映画館ですから、映画以外はやらないんです」とおっしゃいました。上演を半ば諦めかけたとき、高野さんが「わかりました。あなたのためならお貸ししましょう」と静かにおっしゃったんです。
はっとして、何かが弾けたような瞬間でした。「ただし」と言葉は続きました。
「小さなホールだけれどもハードルを下げないでください。片手間になるような感じにしないでほしいんです。1000円とか、安いお金でやらないように」
正直、心のなかをのぞかれたような思いでした。

当時私は劇団を出てフリーになったばかりで、時間はあるから何かしようとプロデューサーの笹部さんが勧めてくれた企画が「百物語」だったのです。「芝居と朗読は別物。難しいわよ。不得手だからダメ」って尻込みした私に、笹部さんは「勉強会のつもりで。狭いところで気楽にやったらどうだろう」って。つまり気軽に、片手間にやろうって感じだったんです。高野さんにはそういう邪よこしまな気持ちを見抜かれていたのかもしれないですね。
高野さんを裏切らないように精一杯やろうという気持ちで稽古に励みました。一人舞台だし、初めての試みで不安もあったけれど、高野さんの「あなたのために」という言葉が私を支えてくれました。それは今日も変わっていません。 第一夜の初日、入場を待つお客様が列を作っていると聞いたときは本当に嬉しかった。白石加代子の「百物語」はあの瞬間スタートを切りました。

作品の選定 始めた頃は、取り上げる作品について演出家の鴨下さんたちと一緒になって私も考えさせていただいたのですが、どうしても私の思考は偏りがちになってしまうんですよね。以来、鴨下さんが中心になって選んでくださっています。ときには突拍子もない作品を選ばれることもあり、私としては「自信ないわ」と思っても、鴨下さんの演出で思いもかけないところにたどり着くことができたりします。常に新しい発見がありますね。
ファイナル公演の作品は、第九十八話・三島由紀夫「橋づくし」、第九十九話・泉鏡花「天守物語」です。泉鏡花の作品は言葉が豊潤で美しい。また、ファイナルにして初めて三島作品を取り上げることができて、大変楽しみにしています。

怪談話 怖い話は苦手なんです。作品のなかにはいわゆる怪談ものもありまして、物の怪が出てくるお話をさせていただいたときは公演終了後の口上の際に、お浄めの塩を撒いたりするんですね。でも、あるとき観に来てくださったお客様に、「白石さんがお塩を撒くところが一番怖かった」って言われたことがあります(笑)。

所沢ミューズで「百物語」 長い女優生活のなかでただ一度、頭が真白になってセリフが出てこなくなったことがあります。「メアリー・スチュアート」に出演中の、マーキーホールでのことです。丸天井の美しさに見とれていたせいだといまも思っています。次に「百物語」シリーズ第一夜でホールにうかがったときもドキドキしましたが……。もう大丈夫です。ファイナル公演で再びお呼びいただけたことを感謝いたします。
これまで支えてくださった皆様に感謝し、集大成にふさわしい作品になるよう精進してまいります。ぜひ劇場にお運びくださいませ。

【2014年8月23日 公演】

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